Push: Ctrl+Y

 技術で遊んで ときどき進む

ブックレビュー

人と機械の境界線:インターフェイスについて考えさせられた本 3冊

 

interface

境界っていう言葉が持つ、アンバランスなバランスがすごく好きだ。
そしてエンジニア的にいえば、ここ数年気になっているのが「人」と「コンピュータ」との境界線:インターフェースについてです。

コンピュータとの境界線は、以前は持ち運びできない画面の中にあった。ユーザーアクションのほとんどは、キーを押すか・クリックするか。作る方は、その画面を「いかに使いやすいものにするか」に注力すれば良かった。ボタンの配置は右上で統一・項目は重要なものほど上へ配置・検索エディタはフォーカス->エンターで検索開始・・。
対して、今のインターフェースは選択肢が多い。スワイプしたら・スマホを傾けたら・歩き始めたら・・引き金になるアクションが多すぎて、作る側のセンス的なものによって同じものがピンキリの結果になってしまう。

そんなセンスの必要性に気づき始めたのと時を同じくして、「デザイン」というのがIT業界でも流行しはじめたように思う。それも人間が技術に求めるものが多かった時代から、逆に技術があふれてきたからこそ、今度は人間による取捨選択の力が求められているのかなあとぼやっと理解していますがとりあえず、作り手の一端として心動かされた「インターフェイス」についての本を紹介したい。

 

人間と人工知能の境界ってどこ? 『機械より人間らしくなれるか?』

近年、「りんな」がすごい!と話題になったり、LineでBOT APIがトライアルで提供されたり、いわゆる『チャットボット』が身近になっているが、『チューリングテスト』や『ローブナー賞』はご存知だろうか。
チューリングテストは「知能をもっているか?」をテストするための指標のひとつで、顔を見ずに会話をしたときにそれが「人間」なのか「機械」なのかを判別できないほど機械が自然であれば、それを「知能を持っているとみなす」というものだ。
ローブナー賞は1991年から毎年開かれている大会で、このチューリングテストを実際に行っている。2014年にロシアのスパコンがこのテストに合格したことでも話題になった。

本書は、ローブナー賞を争う大会にサクラ役の人間として出場した著者が「人間らしい人間って何??」を考え抜き、「最も人間らしい人間」としての賞をもらうまでの話だ。機械と比較することで初めて気づく、「人間らしさ」。著者と一緒にその「人間らしさ」を探す旅をしている気持ちになり、読みやすく楽しい。

私はこれをきっかけに「脳」について興味がわき、『意識はいつ生まれるのか』という本を続けて読んだ。かなりおすすめなので、興味がある方は合わせて読んでほしい。

 

完璧なロボットは人と上手にやっていけない 『ロボットの悲しみ コミュニケーションをめぐる人とロボットの生態学』

一生懸命お掃除するルンバをかわいいと言う人」を見ても普通だと思うが、「ファービーを抱いてお花見をし、語りかける人」を見るとなんだか痛々しく感じる。それは何故なのか。
そんな問いからはじまるこの本は、人とロボットのコミュニケーションに関する本だ。

ロボットはどんどん賢くなる。
ディープラーニングという、脳を模した学習方法を機械で実現できるようになってからの技術の進歩は目覚ましい。賢くなった分だけ人に寄り添ってくれるようになる機械。けれど同時に、そんな「賢い」ロボットに対する人の感情は複雑だ。ロボットとコミュニケーションをとることを「哀れ」だと思ったり、仕事を取られるのではないかと「恐れ」たり、制御できなくなるのではと「不安」になったり・・。賢くなって人の役に立ちたいのに、賢くなることで人にマイナスの感情を持たれてしまうロボット、その矛盾を本書は「ロボットの悲しみ」として取り上げている。

私たちがロボットにそんな感情を抱いてしまうのは、「ロボットが完璧だから」だ。完璧なものは他者、つまり人間を必要としない。必要とされなければ人は自分の価値をそこに見いだすことができず、その存在を畏怖すれど、近くにいることが辛くなる。
また、人はロボットが「作られたもの」であることを知っている。いくら「らしい」動作で私たちと関わりをもったとしても、その先に「作り手の作為」が見えてしまうために、素直にその存在を受け入れられない。

ではどうすれば良いのか。
それは、「人の手を借りないと仕事ができないところ」を残すことで、人が受け入れやすい状態を作ることだ。最初の例で言えば、ルンバは床に置いてあるものを片付けてあげなければ上手にお掃除できないし、出ちゃだめな範囲を指定してあげないと迷子になってしまう。仕事はできるのにちょっと間が抜けているその感じが、人を安心させている。
本書には他の例も紹介されている。

  • ゴミを発見できるけど片付けられない、ゴミ箱ロボット
  • ただ手をつないで歩くだけのロボット
  • 手も足もついておらず、一人では何もできないロボット

どれもユニークで、そして「関わりたくなる」ロボットたちだ。他にも紹介されているので、以下のリンクも参照してみてほしい。

 

「これからの創るもの」の指針 『融けるデザイン ―ハード×ソフト×ネット時代の新たな設計論』

コンピュータとは一体何か?
パソコンを思い浮かべれば、「インターネットに繋がるもの」「データを整理するもの」「メールするもの」。スマホを思い浮かべれば、「友達との通信手段」「ゲームするもの」「ニュースを読むもの」。だがこれは、「コンピュータ」というものの使い方の一部に過ぎない。その証拠に、技術が発展したことでコンピュータは、「机に座って書類を整理するための道具」から「スマホとして持ち歩いたり、町中に設置されて自分の情報を吸い上げたりする道具」へと変化してきた。
コンピュータの本質は計算機だ。コンピュータは命令さえ適切であれば、意外と何でも実現できる。コンピュータが十分に浸透し、「適切な命令」に関する技術も十分に揃ってきた現在、大事なのは「技術」よりむしろ、「何を作るか」という人間側の選択だ。その選択により、コンピュータという万能機械は豊かな表現でもって人を助けることができる。

「何を作るか」。この難しい問いに対して、本書は「インターフェイスデザイン」という切り口から答えている。詳しくはぜひ読んでほしいが、重要なのは「作ったものによって得られる人間の体験について考え抜く(※)」ということだ。
作ったものに対しては、この問いを考えたい。

  • それは人にとって、以下のいずれかに当てはまる行為になっている?(<-->人間は、こういう行為しか能動的にやらない
    • 自然な行為(=いつも何気なくやっている行為)
    • 楽しい・テンションがあがる行為(=自分の「能力」や「可能性」が広がったと感じられる行為)
  • それは人の作業を「代行するもの」か「拡張するもの」?それが人が「やりたいこと」なのであれば、「代行」ではなく「拡張」の方向でデザインされているか。(<-->人間は楽しい行為を奪ってしまうものを忌避する
  • そのインターフェイスは、人が気持ちがいいと思う形になっている?道具を使っているということが、意識に登らないほど自然か?(<-->人間が「使い続ける道具」は、それが手足:自分の延長線のように使えるもの

 

特に最後の、人間が使っていて気持ちがいいと思うインターフェイスを重視している点にはなるほど!と思った。AppleのiPhoneが流行ったのも「思った通りに動く」という気持ち良さに裏打ちされているし、任天堂のスプラトゥーンもジャイロ機能をタイムラグなく動作させることで、まるでその世界にいるかのように相手を発見してインクを打てる、という体験に非常に興奮させられた。今まで無意識に「すごいなあ」と思っていたことが、本書を読んでから「こういうところがすごい!」と認識できるようになった。

逆に「何を作るか」を考えるときには、「人間が暗黙的にやっていること」が何かに使えないかと注目したり、「おもしろいと思ったことをもっとおもしろくできないか」を考えたり、というところにヒントを見いだせるようになる。
読むことで、今までとは違ったアンテナをひとつの与えてもらった。

※それも科学的な側面(『アフォーダンス』という認知科学領域の学問がキーワードとして出てくる)をもっと重視したほうが良いのかもしれないと個人的に思った。現在読んでいる途中だが、以下が詳しい。

 

まとめ

3冊と書いておきながらそれ以上紹介してしまいましたが、どれもおすすめです!
ぜひぜひ読んでみてください。

・・よし、実践もがんばろう。

 

番外編

実践に偏るので次点となったが、本当に良著!!!自分で画面を設計するにあたって感覚で済ませていたところが、この本を手にしてからいちいち気になるようになりました。実践的デザイン書としてはピカイチだと思っています。

 

-ブックレビュー
-,

おすすめの記事

1
React + Redux入門① - Reduxの概念を理解

React+Reduxでサイトを作っているので、復習がてら「検索画面を作成する」 ...

2
React + Redux + D3.js アニメーション:ドラッグ&ドロップでキングスライムを作った

はい、今回は要素のドラッグ&ドロップを中心に作ってみました。 Mater ...